認知療法・認知行動療法を実践している身としてはお恥ずかしい限りなのですが、先日、初歩的な自動思考のトラップに引っかかってしまい、胸部圧迫感の症状に襲われ、襲われている間の生活レベルを落としてしまいました。今、コラム法を使って振り返ってみると、自動思考の基本の「キ」に失敗しています。戒めの意味を込めて、自動思考のケーススタディとして振り返ってみたいと思います。

その前に、認知療法・認知行動療法の実践の基本作業になる「コラム法」についてまだ説明していませんでしたね。今日のブログではとりあえずエピソードの記述に留め、コラム法は説明しませんが、以下の厚生労働省のHPでコラム法について書いてあるので、読んでいただけると幸いです。コラム法については後日書きます。


●認知行動療法 患者さんのための資料 P9(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf

●認知行動療法 コラム表様式例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/03.pdf

●認知療法・認知行動療法の実践 ~定義編~(2017年1月12日)
http://blog.livedoor.jp/atsshow/archives/10603896.html


1 状況

仕事の帰り際に、同僚から、「○○の資料って今どんな感じですか?」と聞かれた。(当日の朝に作って、決裁を上げた資料です。とある事案に対する各種報道をとりまとめた概要ペーパーです。)


2 気分

後悔 60

不安・焦り 50


3 行動・反応

胸部圧迫感 50


4 自動思考

(1)同僚から資料の決裁状況を確認されてしまった。自分の仕事は遅いと思われているのだろう。やっぱり自分は仕事が出来ないんだ。(白黒思考、自己批判、深読み
(2)きっと、上司から、私の仕事の進捗状況を確認するように指示があったんだろう。(深読み
(3)その日の朝に決裁に上げた資料なので、一日かけても決裁が下りないのは遅い。そこかの決裁ラインで止まっているはずで、それを確認するべきだった。


5 根拠

(1)実際に同僚から決裁状況を確認された。
2)朝に決裁に上げたものなのに、決裁を了しなかった。上司も早く内容を確認したかったに違いない。
(3)自分も早く決裁が下りないか、どこの決裁ラインに入っているんだろうと日中気にしていた。


6 反証

(1)決裁状況を確認されただけで、「急いだ方が良い」などの具体的な指摘をされたわけではない。
(2)上司からその同僚に対して、私の仕事の進捗状況を確認するように指示があったことを確認する術は無い。また、本当に急いでいるんだったら、「あの資料はいまどんな感じだ?」といったように、上司から具体的に確認されているはずだ。
(3)決裁のスピードは自分ではどうしようもない。自分の責任は決裁ラインに上げるまで。どうしても急を要する案件なのであれば、急ぎで回すように指示があるはずだし、その場合は持ち回りで決裁するなどのオプションを行使できた。


7 適応的思考

(1)まず事実として、同僚の意図としては、幹部のマスコミとの懇談用の手持ちの資料の決裁をする際に、当該資料を入れ込みたかったことが判明。つまり、上司からの指示を元に私に確認したわけではなく、自分の担当業務の範囲内で、状況確認しただけ。
(2)自分は朝の段階で決裁を上げているし、上司から早くやるように指示を受けたわけでは無い。どれくらいのスピードで決裁が終わるかは基本的には受け身だ。また、同僚が状況確認してきた際に、確認してきた意図を確認していれば、このような無用な自動思考・ストレス反応は防ぐことができた。


8 今後の課題

非現実的な自動思考でストレスを溜めるのはとてもバカバカしい。思い切って相手に聞いてみれば良い。


といったような感じですね。まだまだ荒削りですが、これがコラム法の一連の流れです。

同僚から仕事のことを聞かれ、自分は仕事が遅いんだ、上司から同僚を通じてチェックされているんだという自動思考により、焦りや不安を呼び込んで胸部圧迫感に苦しんでいたものの、実は全然同僚はそんなことを考えていなくて、自分の担当業務の範囲内で聞いてみただけだったというオチです。認知のゆがみにより、こんな些細なことで一気に身も心もむしばまれてしまうのが怖いですね。しっかりと認知療法・認知行動療法で現実的な物の見方ができるように修正していきたいと思います。


そして、その裏にある「スキーマ」ですが、バックデータが足りないので全く予断はできないものの、「カンペキにやらなくてはいけない」「全員から愛され(評価され)なければならない」といったようなスキーマが自分の心の中で眠っているような気がします。そのため、「できない自分」に対して「なんでできないんだろう」とストレスをためて体調不良になり、「周りから評価されていないんだ」みたいな深読みの繰り返しで心を病んでうつ病になったんですかね。


認知がしっかりしていれば、自分の役割やどこまで現実問題できるのか・やるべきなのか等を踏まえて、冷静に仕事というゲームに徹することができていたのかもしれません。


引き続き、認知療法・認知行動療法を実践してまいります。