「あなたの、本名、年齢、住所を確認したいので、写真付きの身分証明書を見せてください。」



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俺はラインの画面を見て、目を疑った。




「美味しいお店見つけたから、一緒に行こうよ。」こうラインでメッセージを彼女に送ったところ、冒頭のメッセージが返ってきた。



俺は、女の子にそんなことを言われたことは今まで一度も無かった。




彼女は一体どんな子なんだろう。
今まで、どんなことがあれば、こういう発言ができるんだろう。



俺は彼女に興味を持った。
会って、話してみたい。






ふとしたことから彼女と出会って、連絡先を交換したのは、このやりとりの2週間前くらい。


会話しているときは、とても居心地の良い時間で、お互い惹かれあっていたと思う。



それなのに、いきなり「Trust Issue」の提示。


言われるままに身分証明書を見せるのは、彼女にイニシアティブを握られているようで、プレイヤーとしては気分が悪い。


そのため、ロスカットを検討したが、お高い惹かれあっていることを感じていたので、TrustIssueをクリアすればゴール濃厚だろう、と判断し、



「わかった。会って話そ。」




と回答した。



しかし、アポ当日、俺は多忙を極めていた。


クライアントからの無茶ぶり、上司へのレポートの提出、いつもであれば徹夜コースである。起業してからというものの、仕事の責任はサラリーマン時代よりも重たい。


俺は、彼女と合うのは難しいなと判断して、彼女に



「ごめん、緊急の仕事がたくさん入ってしまって、今日行けそうにない。」



と電話をした。



彼女は、



「待ち合わせ場所にもう着きました。待っていますので、少しだけでも会えませんか?」



俺は直前のキャンセルになってしまった申し訳なさもあり、彼女に謝るため、待ち合わせ場所に行った。


そして、1時間程度なら中抜けしても良いだろうと判断し、いきつけのスターバックスコーヒーに彼女を連れて行った。



トールラテを2つ注文。Cフェーズで和む。彼女の服装を褒めたり、恋愛トークを展開する。時間も短いので、テンポ良くCフェーズを潜っていった。


すると彼女は、「もう仕事行かなきゃなんですよね。今日、私、心を決めてきたのに。」


なんと、彼女から明示的な脈アリサインが出た。


こんなに楽しみにして来てくれ、おしゃれ・メイクもしてきてくれたのに、ここで解散したらも失礼になってしまうだろう。




「お前、ずるいよ。そんなこと言って、仕事行きたくなくなっちゃうじゃん。」




俺は、2時間中抜けすることを決めた。


仕事は、集中して明日の納期までに不眠不休でも仕上げてみせる。


そして、スターバックスを退店し、一軒立ち飲みをはさんで愛情ワクチンを投下し、俺の家へと歩いて向かう。



彼女は、



「あの、身分証明書の件なんですけど・・・」



俺は、



「なんでそんなこと聞いたの?俺は君がどこの誰だって構わない。今こうして一緒にいてとても特別な気持ちを感じていて、もっと一緒にいたいと思ってる。君は違うのかな?」



彼女は、



「・・・、私もです。」



その後、彼女ととても素敵で甘い時間を過ごした。




彼女は、身分証明書うんぬんを言ったのは悪気が無かったようだ。


おそらく、今まで交際していた男にひどいことをされたり、あるいは、周りの自警団の友達から変な入れ知恵をされたり、いろんな背景があったのかもしれない。


相手に身分証明書を明示的に求めるなど、「お前のことを信用していません」ということと同義だし、大変失礼なメッセージである。


しかし、彼女は結果として、身分証明書のことなどどうでもよく、俺と甘い時間を過ごしていた。



今までの俺だったら、trust issueをレイズされた段階でロスカットしていただろう。


また、非モテマインドであれば、この発言をされて日和ってしまっていたかもしれない。


しかし、女性は言っていることとやっていることが、支離滅裂でてんでばらばらだ。


会ってみて、話してみて、いい感じだったから、「なんとなく」セックスしたのかもしれない。


一つ言えるのは、相手が何を言っていようが、ゴールできたという事実だ。



そして、ゴールできるかどうかは、相手が何を言っていようが、シュートを打つまではわからないのだ。